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TECHNICAL NOTE

円形立坑の地震時断面力 ― シェルモデルとはりモデルの比較

構造解析

円形立坑の耐震計算では、立坑を1本のはりに置き換えて地盤ばねで支える「はりモデル」がよく使われます。一方、側壁と底版を平板(シェル)要素で表す3次元モデルなら、断面の変形や側壁の局部的な曲げまで求められます。本稿では同じ立坑・同じ地盤条件・同じ地震時荷重に対して両モデルを解き、全体の曲げモーメント・せん断力・変位を比較して、どこが一致し、どこが違うのか、その理由を整理しました。

掲載内容について

立坑の寸法・地盤条件・入力地震動は、技術説明のために設定した仮想事例(仮定値)であり、実案件の情報は含みません。数値は社内の3次元骨組・平板解析プログラムと1次元地盤応答解析プログラムによる試算結果です。適用する基準・地震動・許容値は、施設管理者の定める基準類に基づき個別に確認します。

立坑
内径 8.0 m・深さ 20.25 m
地盤の相対変位
116 mm
全体曲げ(シェル)
63.6 MN·m
はり(等価ばね)
72.5 MN·m
はり(慣用ばね)
35.6 MN·m
01

検討条件と2つのモデル

構造 RC 円形立坑(内径 8.0 m、側壁厚 0.8 m、底版厚 3.0 m、頂版 0.5 m)
深さ GL−20.25 m(底版下面)
地盤 砂質土・粘性土・砂礫の4層(Vs = 180〜350 m/s)、工学的基盤 Vs = 450 m/s
入力地震動 道路橋示方書のレベル2標準加速度波形 タイプⅡ(Ⅰ種地盤用)T2-1 を工学的基盤に入力
地震時荷重 応答変位法:地盤変位・周面せん断力・躯体慣性力(地震時増分のみ)
項目 シェルモデル はりモデル
要素 平板要素 1,184 はり要素(円環断面)
断面 側壁 t = 0.8 m A = 22.12 m²、I = 215.9 m⁴
地盤ばね 側壁・底版の全面に平板ばね(法線 kH、せん断 kH/3) 節点ごとの水平ばね+底面の回転ばね
得られる値 側壁の断面力 N・M・Q(位置ごと) 全体の M・Q(高さごと)

地盤の応答は1次元の等価線形解析で求め、立坑底面に対する地表の相対変位が最大となる時刻(t = 5.74 s、相対変位 116 mm)の地盤変位・せん断応力・加速度を両モデルに同じように作用させました。はりモデルは地盤ばねの与え方を変えた2ケースとしました。

ケース 水平ばね(単位深さ当り) 考え方
はり(慣用ばね) kH × 外径 D 設計でよく使われる与え方。底面は kV による回転ばねと kS による水平ばね
はり(等価ばね) シェルの平板ばねを周方向に積分した値 シェルと同じ地盤剛性・同じ荷重を与えたはり。モデル化そのものの違いだけを比べるためのケース
円形立坑のシェルモデルとはりモデル
図-1 比較した2つのモデル(左:シェル、右:はり)
02

全体の曲げモーメント・せん断力・変位

シェルモデルの側壁の鉛直方向軸力 Ny と面内せん断力 Nxy を高さごとに周方向に積分し、立坑全体の曲げモーメントとせん断力に換算して、はりモデルと並べました。

水平変位・全体曲げモーメント・全体せん断力の深さ方向分布の比較
図-2 水平変位・全体曲げモーメント・全体せん断力の比較(地震時増分)
項目 シェル はり(等価ばね) はり(慣用ばね)
全体曲げ 最大 (MN·m) 63.6(Z = -7.0 m) 72.5(+14%) 35.6(-44%)
全体せん断 最大 (MN) 27.4 28.0 20.2
底版位置の曲げ (MN·m) 11.6 20.0 29.1
頂部の水平変位 (mm) 121.5 122.0 128.5
底部の水平変位 (mm) 39.1 39.6 27.9

検算:はりモデルは各ケースとも、ばね反力の合計が水平荷重の合計と一致(等価ばね 603.6 MN、慣用ばね 319.6 MN)。等価ばねケースの水平荷重の合計はシェルに与えた荷重の合計 603.6 MN と同じ。括弧内はシェルに対する差。

違いの要因① 地盤ばねの与え方

平板ばねは側壁の全周に法線方向 kH・接線方向 kH/3 で作用するため、周方向に積分した水平剛性は π·R·(kH + kH/3) となり、kH × D の約 1.9 倍(理論値 π × 4.4 × 4/3 ÷ 9.6 = 1.92)になります。慣用ばねのはりは地盤との結び付きが弱いぶん、地盤変位から受ける荷重も小さく、全体曲げの最大値はシェルの 56% にとどまりました。一方、底版位置の曲げは 29.1 MN·m とシェル(11.6)より大きく、深さ方向の分布形そのものが変わっています。

違いの要因② はり理論の仮定

地盤ばねと荷重をそろえた等価ばねのはりでも、全体曲げの最大値はシェルより 14% 大きくなりました。変位はほぼ一致しているので、違いは断面力の分担の仕方にあります。はり要素は平面保持・せん断変形無視の仮定に立ちますが、この立坑は深さと外径の比が約 2 と太短く、せん断変形の影響を表す係数 φ = 12EI/(G·As·L²) は 1.6(As = A/2、L = 18.75 m として概算)と、曲げ変形と同程度の大きさになります。加えてシェルでは断面がだ円状に変形できるため、はりより柔らかく振る舞い、全体曲げが小さめに出たと考えられます。この2つの寄与は今回のケースでは分離していません。

POINT

同じ立坑でも、はりモデルの全体曲げはばねの与え方しだいでシェルの 56%〜114% と大きく変わりました。比較の前提をそろえないと、モデルの違いとばねの違いが混ざって見えます。はりモデルを使う場合も、地盤ばねの換算方法(周面のせん断ばねを見込むか)は設計方針として明示しておく必要があります。

03

はりモデルでは得られない側壁の局部的な断面力

シェルモデルでは、側壁の位置ごとに鉛直方向の軸力と曲げが得られます。はりモデルの全体曲げから側壁の軸力を換算する(Ny = M·R / I × t)と、等価ばねケースで最大 1,183 kN/m となり、シェルの 1,043 kN/m を上回りました。

側壁の鉛直方向曲げの展開図と、θ=0°での軸力・曲げの高さ方向分布
図-3 シェルの側壁の鉛直方向曲げ My(左)と θ ≈ 0° の高さ方向分布(右)
位置 鉛直方向曲げ |My| (kN·m/m) 要因
底版との接合部(Z = -18.4 m) 180.7 底版による側壁の回転拘束
中間高さ(Z = -6.4 m) 73.7 地盤ばね反力の周方向分布による側壁の面外変形
POINT

側壁の配筋を決めるのは、全体曲げから換算した軸力だけではありません。底版との接合部では、はりモデルには現れない鉛直方向の曲げ 181 kN·m/m が局部的に生じています。はりモデルで設計する場合は、接合部の曲げを別途見込む方法(固定端としての簡易計算など)を組み合わせる必要があります。

04

まとめ

01

地盤ばねと荷重をそろえた条件で、はりモデルの全体曲げはシェルより 14% 大きく、変位はほぼ一致した。太短い立坑ではせん断変形と断面変形の影響が無視できない。

02

kH × D の慣用ばねは、シェルの平板ばねを周方向に積分した剛性の約 1/1.9。全体曲げの最大値はシェルの 56% となり、分布形も変わった。

03

側壁の局部的な鉛直曲げ(底版接合部 181 kN·m/m)はシェルモデルでのみ得られる。

04

はりモデルは全体挙動の把握に有効だが、ばねの換算方法と接合部の局部曲げの扱いを設計方針として明示することが重要。

本検討の適用範囲と限界

  • 地震時増分のみの線形解析です。常時荷重との組合せ、部材の非線形性、照査は対象外です。
  • 比較は1波(タイプⅡ T2-1)の1時刻に対するものです。波形・時刻が変われば差の大きさも変わります。
  • 地盤ばね定数は道路橋示方書 Ⅳ 下部構造編の推定式を準用しています(版・条項【要確認】)。周面のせん断ばねを kH/3 とした点も仮定です。
  • はりモデルとシェルの差の要因(せん断変形・断面変形)は、概算と考察によるもので、個別に分離した検証は行っていません。

ご注意

  • 本ページの数値は仮想事例に対する試算結果であり、他の施設にそのまま適用することはできません。
  • 解析結果は、技術者による検証と照査を経て設計に用いることを前提としています。
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