トラス部材の圧縮照査では、有効座屈長を格点間の長さ(有効座屈長係数 K = 1.0)とおくのが一般的です。しかし実際の座屈長は、部材端の拘束や横構の剛性によって変わります。本稿では、トラス補剛形式の水管橋を3次元骨組でモデル化して座屈固有値解析を行い、座屈荷重倍率から上弦材の有効座屈長を逆算しました。あわせて、上横構の有無と断面を変えたときに、座屈荷重と有効座屈長がどう変わるかを比較しました。
掲載内容について
水管橋の寸法・部材断面・荷重は、技術説明のために設定した仮想事例(仮定値)であり、実案件の情報は含みません。数値は社内の3次元骨組解析プログラム(静的・線形座屈)による試算結果です。適用する基準・許容応力度は、施設管理者の定める基準類に基づき個別に確認します。
検討条件と解析方法
| 形式 | 送水管(φ800×9)を下弦材とする逆三角形断面のトラス |
| 寸法 | 支間 40.0 m(10 パネル × 4.0 m)、トラス高 2.5 m、上弦間隔 2.2 m |
| 上弦材 | 鋼管 φ216.3×8.2 |
| 斜材 | 鋼管 φ165.2×7.1 |
| 上横構・支材 | 鋼管 φ101.6×4.2 |
| 支持 | 一端固定・他端可動(いずれも送水管位置) |
| 荷重 | 死荷重(鋼重)+管内水重 |
座屈固有値解析は、荷重による各部材の軸力から幾何剛性を作り、(K + λ·Kg)φ = 0 の固有値として座屈荷重倍率 λcr を求めるものです。各部材は4要素に分割し、部材自体の曲げ座屈も表せるようにしました。
有効座屈長係数は、座屈モードで最も大きくたわむ部材について、座屈時の軸力 Ncr = λcr × N からオイラー式を逆算して求めました。
K = (π / L) · √( EI / (λcr · |N|) )

解析方法の検証
| 検証モデル(鋼管 φ216.3×8.2、長さ 5 m、4要素) | 解析の座屈荷重 | 理論値 π²EI/(KL)² | 誤差 |
|---|---|---|---|
| 両端ピン(K = 1.0) | 2,296 kN | 2,295 kN | +0.05% |
| 両端固定(K = 0.5) | 9,248 kN | 9,179 kN | +0.75% |
4要素分割でオイラー座屈荷重との誤差は 1% 未満であり、本検討の部材分割で部材の座屈を評価できることを確認しました。
座屈モードと座屈荷重倍率

| ケース | 次数 | λcr | 主にたわむ部材 | 位置 | 軸力 N (kN) | K |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 基本(上横構・支材あり) | 1 | 17.21 | 上弦材 | x = 20 m | -319 | 0.81 |
| 2 | 17.24 | 上横構 | x = 20 m | -20 | 0.65 | |
| 3 | 19.88 | 上横構 | x = 20 m | -20 | 0.60 | |
| 4 | 20.43 | 上弦材 | x = 20 m | -319 | 0.74 | |
| 上横構なし(支材のみ) | 1 | 9.71 | 上弦材 | x = 16 m | -310 | 1.09 |
| 2 | 9.72 | 上弦材 | x = 20 m | -323 | 1.07 | |
| 3 | 12.33 | 上弦材 | x = 28 m | -271 | 1.04 | |
| 4 | 12.59 | 上弦材 | x = 24 m | -310 | 0.96 | |
| 上横構・支材を1断面細く(φ76.3×3.2) | 1 | 12.09 | 上横構 | x = 20 m | -15 | 0.50 |
| 2 | 12.13 | 上横構 | x = 20 m | -15 | 0.50 | |
| 3 | 12.61 | 上横構 | x = 16 m | -15 | 0.50 | |
| 4 | 12.63 | 上横構 | x = 24 m | -15 | 0.50 |
「主にたわむ部材」は、座屈モードで部材両端を結ぶ直線からのずれが最大の部材。K はその部材について算定(軸力が引張の部材は算定対象外)。
基本ケースの1次座屈は、支間中央付近の上弦材が上横構とともに面外に波打つモードで、λcr = 17.2(死荷重+水重の 17.2 倍)でした。上横構を取り除くと上弦材は複数パネルにまたがって大きく面外にたわみ、λcr は 9.7(-44%)に下がりました。上横構と支材を細い断面(φ76.3×3.2)にすると、上弦材より先に上横構そのものが座屈し、λcr は 12.1(-30%)になりました。
上弦材の有効座屈長

| ケース | 上弦材の λcr | Ncr = λcr·|N| (kN) | K | KL/r | 許容圧縮応力度 σca (N/mm²) |
|---|---|---|---|---|---|
| K = 1.0 と仮定 | ― | 3,586(π²EI/L²) | 1.00 | 54.3 | 110.2 |
| 基本(上横構あり) | 17.21 | 5,483 | 0.81 | 43.9 | 118.7(+7.7%) |
| 上横構なし | 9.71 | 3,010 | 1.09 | 59.3 | 106.1(-3.7%) |
L = 4.0 m(格点間)、r = 断面二次半径。σca は SS400 相当の道路橋示方書の式を準用した値【要確認】。
上横構がある基本ケースでは、上弦材の有効座屈長係数は K = 0.81 となり、格点間長(K = 1.0)より短くなりました。隣接パネルの上弦材と上横構が回転を拘束しているためで、K = 1.0 とする照査は安全側です。一方、上横構がないと K = 1.09 と格点間長を上回りました。支材だけでは格点の面外移動を十分に止められず、上弦材が隣のパネルとつながって座屈するためです。
格点間長を有効座屈長とする前提は、格点が面外に動かないこと、つまり横構が十分な剛性を持つことです。上横構を省いたり細くしたりすると、K = 1.0 の仮定は危険側になり得ます(本例では K = 1.09)。座屈固有値解析は、横構の要否と断面の妥当性を確かめる手段として有効です。
まとめ
3次元骨組の座屈固有値解析で、基本ケースの1次座屈荷重倍率は 17.2、上弦材の有効座屈長係数は K = 0.81 となった。
上横構を省くと座屈荷重倍率は -44% 下がり、上弦材の K は 1.09 と格点間長を上回った。
上横構・支材を細くすると、上弦材より先に上横構が座屈した(λcr = 12.1)。横構自体の座屈も確認が必要である。
K = 1.0 の仮定は横構が十分なときに成り立つ。横構の構成を変える場合は、座屈固有値解析で有効座屈長を確かめるとよい。
本検討の適用範囲と限界
- 線形座屈解析(初期不整・材料非線形を考慮しない分岐座屈)による検討です。実際の耐荷力は座屈荷重倍率より小さくなります。
- 荷重は死荷重+管内水重のみです。風・地震・温度による軸力分布の変化は考慮していません。
- 部材の接合は剛結としています。ガセット等の接合部の剛性や偏心は考慮していません。
- 許容圧縮応力度は道路橋示方書の式を準用した参考値です。水管橋に適用する基準(水道施設設計指針、水管橋設計基準など)と有効座屈長の扱いは個別に確認が必要です【要確認】。
ご注意
- 本ページの数値は仮想事例に対する試算結果であり、他の施設にそのまま適用することはできません。
- 解析結果は、技術者による検証と照査を経て設計に用いることを前提としています。
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