地盤と構造物を一体でモデル化する2次元FEM動的解析では、無限に広がる地盤を有限の範囲で切り取ります。切り取る幅(解析領域)と、切り口の側方境界の条件が適切でないと、境界で反射した波や境界の拘束が構造物の応答に混入します。本稿では、2池式の地下式配水池の横断面を対象に、解析領域の片側幅を 20〜120 m、側方境界を3種類に変えて動的解析を行い、躯体の層間変位と断面力がどう変わるかを比較しました。
掲載内容について
本ページの構造物・地盤条件・入力地震動は、技術説明のために設定した仮想事例(仮定値)であり、実案件の情報は含みません。数値は社内の2次元FEM動的解析プログラムと地盤応答解析プログラムによる試算結果です。境界条件の影響を見やすくするため地盤は線形としており、応答値の大きさは設計値ではありません。
検討条件とモデルの照合
| 構造物 | 2池式 RC 配水池(地下式)横断面、幅 30 m・高さ 5.5 m、頂版 0.50・側壁 0.70・中壁 0.50・底版 0.90 m。はり要素(線形)で地盤と節点を共有 |
| 地盤 | As1 砂質土 0〜4 m(Vs = 140 m/s)/Ac 粘性土 4〜12 m(120 m/s)/As2 砂質土 12〜30 m(220 m/s)、平面ひずみ要素・線形 |
| 減衰 | Rayleigh 減衰 h = 2 %(地盤の1次振動数 f1 = 1.412 Hz と 5f1 で設定)、全ケース共通 |
| 底面・入力 | 剛基盤に基盤入力。道路橋示方書 レベル2 タイプⅡ(Ⅰ種地盤用)II-I-1 の 20 秒間【要確認】 |
| 側方境界 | ①左右等変位(左右端の同じ高さの節点を水平・鉛直とも等変位に結合)②水平固定(ローラー)③自由 |
| 解析領域 | 躯体中心からの片側幅 W = 20, 30, 60, 120 m。躯体部は 1 m、躯体端から 1→3 m に漸増、以遠 3 m で分割 |

| 照合項目 | 2次元FEM | 1次元解析・手計算 | 差 |
|---|---|---|---|
| W = 120 m・MPC の側方境界の列 深さ 1.2〜6.7 m 間の最大相対変位 | 59.9 mm | 58.5 mm(1次元・線形・h = 2 %) | +2 % |
| W = 60 m・MPC の同上 | 59.6 mm | 58.5 mm | +2 % |
| 地盤の卓越周期 | ― | 4ΣH/Vs = 0.708 s、伝達関数のピーク 0.602 s | ― |
1次元解析は同じ地盤を剛基盤・線形・一定減衰 h = 2 % で解いたもの。2次元FEM は Rayleigh 減衰のため振動数により減衰が異なり、数 % の差はその影響を含む。
左右等変位の境界では、境界の列の相対変位が1次元解析とほぼ一致しました。境界が「自由地盤(構造物の影響を受けない地盤)」として振る舞っていることの確認になります。
片側幅と側方境界の影響
躯体の左側壁の層間変位(頂版位置と底版位置の水平変位の差)の最大値と、側壁の最大曲げモーメントを、W = 120 m・左右等変位のケースを基準として比較しました(図-2)。

| 側方境界 | 片側幅 | 節点数 | 層間変位 (mm) | 基準との差 | 側壁 |M| (kN·m/m) | 基準との差 | 計算時間 (s) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 左右等変位(MPC) | 20 m | 957 | 134.7 | +29 % | 9,461 | +35 % | 58 |
| 左右等変位(MPC) | 30 m | 1,143 | 113.9 | +9 % | 7,528 | +8 % | 68 |
| 左右等変位(MPC) | 60 m | 1,763 | 102.2 | -2 % | 6,758 | -3 % | 121 |
| 左右等変位(MPC) | 120 m | 3,003 | 104.4 | +0 % | 6,985 | +0 % | 278 |
| 側方水平固定 | 30 m | 1,143 | 8.1 | -92 % | 2,214 | -68 % | 71 |
| 側方水平固定 | 60 m | 1,763 | 85.1 | -19 % | 6,150 | -12 % | 92 |
| 側方水平固定 | 120 m | 3,003 | 120.7 | +16 % | 8,155 | +17 % | 176 |
| 側方自由 | 30 m | 1,143 | 193.7 | +86 % | 11,538 | +65 % | 55 |
| 側方自由 | 60 m | 1,763 | 102.3 | -2 % | 6,975 | -0 % | 101 |
| 側方自由 | 120 m | 3,003 | 86.2 | -17 % | 5,825 | -17 % | 177 |
左右等変位では、W = 20 m(躯体端から 5 m)で層間変位が基準の +29 %、W = 30 m で +9 %、W = 60 m で -2 % となり、躯体幅(30 m)の 2 倍程度の片側幅で結果がほぼ収束しました。水平固定では W = 30 m で層間変位が 8.1 mm まで拘束され、W = 120 m でも +16 % の差が残りました。自由境界も W = 30 m で +86 %、W = 120 m で -17 % と、領域を広げても基準に近づきませんでした。
時刻歴と水平分布で見る境界の影響
層間変位の時刻歴を比べると、最大値だけでは見えない違いがわかります(図-3)。また、層間変位が最大となる時刻における、深さ 1.2〜6.7 m 間(躯体の頂版〜底版の深さ)の地盤・躯体の相対変位を水平方向に並べたのが図-4 です。


W = 60 m の自由境界は最大値こそ基準に近い(-2 %)ものの、時刻歴では主要動の後も大きな揺れが続いており、有限の土塊が側方境界で波を反射しながら揺れ続けている状態です。最大値の一致は偶然で、波形は基準と一致していません。水平固定では境界付近で地盤の変形が拘束され、自由境界では境界付近で逆に変形が大きくなっています。左右等変位の W = 60 m は、躯体から離れると1次元解析の値に戻り、基準とほぼ重なりました。なお本ケースでは躯体の層間変位(104.4 mm)が自由地盤(59.9 mm)の 1.74 倍となっており、躯体が周辺地盤より変形しやすい条件です。
まとめ
左右等変位の境界では、境界の列の相対変位が1次元解析と 2〜3 % の差で一致し、自由地盤として機能していることを確認した。
左右等変位では片側幅を躯体幅の 2 倍(W = 60 m)とすると基準との差は -2 %。W = 20 m では +29 % の過大評価となった。
水平固定・自由の境界は、W = 120 m でも層間変位に 15 % 以上の差が残り、領域を広げるだけでは改善しにくい。
最大値が一致しても時刻歴が一致するとは限らない。境界条件の妥当性は、自由地盤の応答と1次元解析の照合、時刻歴の比較で確認する。
本試算の適用範囲と限界
- 地盤は線形(Rayleigh 減衰 2 %)、構造物は線形はり要素です。地盤の非線形性・剥離・すべりを考慮すると、境界の影響の現れ方は変わります。
- 底面は剛基盤(基盤入力)としており、底面の粘性境界(逸散減衰)は考慮していません。側方の粘性境界・エネルギー伝達境界も対象外です。
- 入力地震動は1波のみです。必要な領域の大きさは地盤条件・構造物の寸法・入力地震動により異なるため、個別に確認が必要です【要確認:基準類での解析領域の目安】。
ご注意
- 本ページの数値は仮想事例に対する試算結果であり、他の地盤・構造物にそのまま適用することはできません。
- 解析結果は、技術者による検証と照査を経て設計に用いることを前提としています。
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