解析モデルをつくるとき、最初に決めるのは「どこまで単純にしてよいか」です。地中の箱形構造物であれば、横断面を奥行 1 m で切り出した2次元骨組で設計するのが一般的です。一方で、実際の構造物には妻壁(端部の壁)があり、長さには限りがあります。2次元モデルは、どこまで実物を代表しているのでしょうか。同じ箱形構造物を2次元骨組と、長さの異なる3つの3次元平板モデルで解き、断面力を並べてみました。
掲載内容について
構造物・寸法・地盤条件・荷重は、技術説明のために設定した仮想事例(仮定値)であり、実案件の情報は含みません。数値は社内の解析プログラム(3次元骨組・平板解析)による試算結果です。適用する基準・照査方法は、施設管理者の定める基準類に基づき個別に確認します。
比べた条件
対象は、土被り 1.5 m の地中に置かれた1室の RC 箱形構造物です。内空は幅 8.0 m・高さ 4.0 m、部材厚は頂版 0.40 m、側壁 0.50 m、底版 0.60 m とし、常時の荷重(頂版上の土被りと上載荷重 10 kN/m²、側方土圧 K0 = 0.5、自重)を作用させました。底版は地盤ばねで支持しています。
2次元骨組は横断面を奥行 1 m で切り出したもの、3次元平板モデルは妻壁を含めて箱全体を平板要素(0.5 m 分割)で表したもので、長さ(妻壁の中心間)Lc を 8 m・16 m・32 m の3通りとしました。断面・荷重・地盤ばねはすべて同じです。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 寸法 | 内空 8.0 × 4.0 m、部材中心線で 8.5 × 4.5 m、頂版 0.40 m・側壁 0.50 m・底版 0.60 m |
| 荷重(常時) | 頂版上 γ·h + q = 18 × 1.5 + 10 = 37 kN/m²、側方土圧 K0 = 0.5(上載を含む)、自重 24.5 kN/m³ |
| 地盤ばね | 底版の鉛直ばね kV = 7,281 kN/m³(N = 10 から推定、水平は 1/3)【推定式の適用は要確認】 |
| 2次元骨組 | 奥行 1 m の骨組。板と曲げ剛性をそろえるため E/(1−ν²) を使用 |
| 3次元平板 | 平板要素 1,138(Lc 8 m)/1,970(16 m)/3,634(32 m)、妻壁あり |

確認:3次元モデルの底版ばね反力の合計は、自重と頂版上の荷重の合計に一致しています(比 1.0000、Lc 32 m)。2次元骨組の鉛直反力も荷重合計 633 kN/m と一致しています。
長い構造物の中央では、2次元で十分だった
まず Lc = 32 m(長さが幅の約 3.8 倍)のモデルで、長さ方向の中央の横断面を見ます。頂版の支間中央の曲げモーメントは 3次元が 184.0 kN·m/m、2次元が 184.4 kN·m/m で、差は 0.2 % でした。側壁下端付近も 179.2 と 180.0 kN·m/m で、ほぼ同じ値です。
妻壁から離れた位置では、構造物は奥行き方向に一様に変形し、横断面の骨組として振る舞います。2次元骨組が前提としている「奥行き方向には何も変わらない」という仮定が成り立っている範囲です。
| 位置(横断面の中央) | 2次元骨組 | 3次元 Lc 8 m | 3次元 Lc 16 m | 3次元 Lc 32 m |
|---|---|---|---|---|
| 頂版 支間中央 Mx | 184 | 74(0.40) | 167(0.91) | 184(1.00) |
| 頂版 端部 Mx | 190 | 97(0.51) | 178(0.94) | 191(1.00) |
| 側壁 下端付近 My | 180 | 120(0.67) | 173(0.96) | 179(1.00) |
単位 kN·m/m。括弧内は 2次元骨組に対する比。3次元の値は要素中心(端部・下端は部材中心線の交点から 0.25 m の位置)。
端部から1スパン程度は、2次元とは別の構造物
次に、妻壁からの距離ごとに頂版中央の曲げモーメントを追いました(図-2)。Lc = 32 m でも、妻壁の近くでは横断方向の曲げが小さく、2次元骨組の値の 95 % に達するのは妻壁から 8.25 m の位置でした。内空幅 8.0 m(中心間 8.5 m)とほぼ同じ距離です。側壁下端の曲げは 6.25 m で 95 % に達しています。
長さが幅とほぼ等しい Lc = 8 m では、中央でも頂版の横断方向の曲げは 2次元骨組の 40 % にとどまり、代わりに縦断方向の曲げ(82 kN·m/m)が同じ程度に生じています。頂版は四辺で支えられた版として、荷重を2方向に分担しています。

2次元骨組の結果が「安全側」に見える場面もあります。短い構造物では横断方向の曲げを過大に見積もるためです。しかし、それは荷重が別の方向に流れているだけで、その方向の鉄筋が足りているかは2次元モデルでは確かめられません。
2次元モデルには「存在しない」断面力
3次元モデルでは、2次元骨組では原理的にゼロになる断面力が現れます。頂版の縦断方向の曲げ(妻壁との接合部付近)は最大 129 kN·m/m で、横断方向の支間中央の値(184 kN·m/m)の 70 % に相当します。側壁には妻壁との隅角部付近に水平方向の曲げ(最大 44 kN·m/m)が、妻壁自体には最大 148 kN·m/m の曲げが生じています。
いずれも、長さが 16 m を超えると値がほとんど変わりません(Lc 16 m と 32 m で同じ)。端部の影響は構造物の長さではなく、妻壁からの距離で決まる局所的なものだからです。


簡略化してよいかを決めるもの
2次元骨組は、間違ったモデルではありません。長さが幅の数倍あり、妻壁から1スパン程度離れた断面であれば、3次元モデルとほぼ同じ答えを返しました(差 1 % 未満)。手早く、見通しがよく、照査の手順とも対応しているという大きな利点があります。
ただし、2次元骨組は「奥行き方向に一様」という仮定を置いたモデルであり、その仮定が崩れる場所では、値が多少ずれるのではなく、存在する断面力そのものが見えなくなります。今回の試算では、妻壁付近の縦断方向の曲げや隅角部の水平方向の曲げがそれにあたりました。
簡略化してよいかどうかは、解析モデルの細かさではなく、「そのモデルが何を捨てているか」を説明できるかで決まる。
実務では、横断面は2次元骨組で設計し、妻壁付近・開口部・接続部など一様性が崩れる箇所を3次元モデルで確認する、という組み合わせが現実的です。どこからが「一様でない範囲」かは、今回のように端部からの距離で影響を見ておくと判断しやすくなります。開口部や構造物の折れ点も同じ考え方で扱えますが、今回の試算には含めていません。
まとめ
長さが幅の約 3.8 倍の構造物では、中央断面の曲げモーメントは2次元骨組と 3次元平板でほぼ一致した(差 0.2 %)。
妻壁から約 8.2 m(内空幅程度)の範囲は2次元骨組の仮定が成り立たず、頂版の横断方向の曲げは小さくなる。長さが幅と同程度なら中央でも 2次元の 40 % だった。
代わりに、2次元では生じない縦断方向の曲げ(最大 129 kN·m/m)や隅角部の水平方向の曲げが生じる。
2次元モデルの適否は、捨てている成分を把握したうえで、一様性が崩れる箇所を3次元で補うことで判断できる。
本試算の適用範囲と限界
- 常時荷重のみの線形弾性解析です。地震時の挙動、ひび割れによる剛性低下は考慮していません。
- 3次元モデルは部材中心面の平板要素で、隅角部のハンチ・剛域は考慮していません。隅角部付近の値は要素分割の影響を受けます。
- 妻壁にも側壁と同じ土圧を作用させ、構造物端部の地盤の拘束(側方の地盤ばね)は考慮していません。
- 開口部、継手(目地)、折れ点は扱っていません。継手がある場合は、継手間の長さが今回の Lc に相当します。
- 地盤ばねの推定式・照査方法は本試算での仮定です。適用する基準類と施設管理者の方針により確認が必要です【要確認】。
ご注意
- 本ページの数値は仮想事例に対する試算結果であり、他の構造物にそのまま適用することはできません。
- 解析結果は、技術者による検証と照査を経て設計に用いることを前提としています。
- 本文中の考察は、試算結果から読み取れる範囲での見解です。
解析モデルの組み立てからご相談ください
2次元骨組と3次元モデルの使い分け、端部・開口部の確認など、構造物の条件に合わせて解析モデルを検討します。資料の電子授受とWeb打合せにより全国対応しています。