等価線形法による1次元地盤応答解析は、応答変位法の地盤変位や地盤ばねの元になる、耐震検討の出発点です。結果は1回の計算で求まるのではなく、「ひずみを求める → ひずみに応じて剛性と減衰を更新する → 再計算する」という繰返し計算の収束値です。本稿では、仮想の3層地盤に道路橋示方書のレベル2標準波を入力し、繰返しの過程で剛性がどのように変化するか、層境界でひずみがどう分布するか、計算条件(分割厚・有効ひずみ係数)で結果がどれだけ動くかを確認しました。
掲載内容について
本ページの地盤条件・動的変形特性・入力地震動の選定は、技術説明のために設定した仮想事例(仮定値)であり、実案件の情報は含みません。数値は社内の地盤応答解析プログラム(等価線形法、周波数領域)による試算結果です。適用する基準・地震動・動的変形特性は、施設管理者の定める基準類と土質試験結果に基づき個別に設定します。
検討条件と初期剛性での周期
| 地層構成 | As1 砂質土 4 m(Vs = 170 m/s)/Ac 粘性土 8 m(160 m/s)/As2 砂質土 10 m(260 m/s) |
| 工学的基盤 | Vs = 400 m/s、単位体積重量 19.6 kN/m³(弾性基盤、2E 入力) |
| 動的変形特性 | HDモデル G/G0 = 1/(1+γ/γ0.5)、h = hmax(1−G/G0) 砂質土 γ0.5 = 0.10 %・hmax = 0.21、粘性土 γ0.5 = 0.25 %・hmax = 0.17 |
| 計算条件 | 分割厚 0.5 m、有効ひずみ係数 α = 0.65、収束判定 剛性・減衰の変化率 1 % 以下、最大 40 回、遮断振動数 15 Hz |
| 入力地震動 | 道路橋示方書 レベル2 標準加速度波形(Ⅰ種地盤用)タイプⅠ 3波・タイプⅡ 3波【要確認:適用する地震動は施設の基準による】 |
| 周期の求め方 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 4ΣH/Vs(初期剛性) | 0.448 s | 手計算 |
| せん断はりの固有値解析(剛基盤) | 0.397 s | 0.25 m 分割の集中質量モデルで独立に計算 |
| 伝達関数のピーク(剛基盤) | 0.397 s | プログラムの線形計算・層内入力 |
| 伝達関数のピーク(弾性基盤 Vs = 400 m/s、2E 基準) | 0.375 s | 本稿の解析条件 |

4ΣH/Vs(0.45 s)は層構成を「走時」で平均した略算値で、層が深さ方向に硬くなる地盤では固有値解析の値(0.397 s)より長めに出ます。剛基盤の伝達関数のピーク(0.397 s)は固有値解析と一致しており、プログラムの線形計算が正しく行われていることの確認になります。弾性基盤では基盤への逸散の影響で、2E 基準のピークは 0.375 s となりました。
繰返し計算の過程
初期剛性(G/G0 = 1)から出発し、各分割層の最大ひずみ × α を有効ひずみとして G/G0 と h を更新する計算を繰り返しました。図-2 は、更新される G/G0 の深さ分布と、前回からの最大変化率の推移です。

| 入力波 | 繰返し回数 | 最大せん断ひずみ | 卓越周期(初期 → 収束後) | 地表の最大相対変位(線形 → 等価線形) |
|---|---|---|---|---|
| T1-1 | 8 | 0.73 % | 0.375 → 0.646 s | 2.8 → 6.5 cm |
| T1-2 | 13 | 1.79 % | 0.375 → 0.796 s | 4.4 → 12.2 cm |
| T1-3 | 19 | 1.25 % | 0.375 → 0.821 s | 3.9 → 10.4 cm |
| T2-1 | 21 | 2.92 % | 0.376 → 0.900 s | 4.5 → 17.9 cm |
| T2-2 | 24 | 3.85 % | 0.376 → 0.953 s | 5.2 → 19.0 cm |
| T2-3 | 21 | 3.35 % | 0.376 → 0.920 s | 5.2 → 17.6 cm |
1回目の更新で剛性は最大 62 %(T2-1)変化し、その後は変化率が徐々に小さくなります。ひずみの小さい T1-1 は 8 回で収束したのに対し、ひずみが 3 % 前後に達するタイプⅡでは 21〜24 回を要しました。収束後の地表変位は線形計算の 2〜4 倍で、剛性低下を考えない線形解析では地盤変位を大きく過小評価します。繰返し回数が多いケースは、収束判定を満たしたかどうかを出力で必ず確認します。
層境界のひずみ集中と分割厚
せん断応力 τ は深さ方向に連続ですが、剛性 G が層境界で急変するため、ひずみ γ = τ/G は境界で不連続になります。T2-1 について分割厚を 2 m〜0.25 m に変え、最大ひずみ・最大せん断応力・収束剛性の分布を比較しました(図-3)。

| 層境界(T2-1、分割厚 0.25 m) | 直上の分割層 | 直下の分割層 | ひずみの比 |
|---|---|---|---|
| GL−12 m(Ac / As2) | γ = 2.91 %、τ = 147.8 kN/m²、G/G0 = 0.117 | γ = 0.45 %、τ = 146.8 kN/m²、G/G0 = 0.256 | 6.5 |
| GL−4 m(As1 / Ac) | γ = 1.45 %、τ = 72.9 kN/m²、G/G0 = 0.097 | γ = 0.36 %、τ = 80.9 kN/m²、G/G0 = 0.516 | 4.0 |
検算(GL−12 m):G(直上)= 0.117 × 1.7 × 160² = 5,092 kN/m²、G(直下)= 0.256 × 1.9 × 260² = 32,881 kN/m²。剛性比 6.46 とひずみ比 6.5 が一致し、τ がほぼ連続(147.8 / 146.8)であることを確認。
| 分割厚 | T1-1 最大ひずみ | T2-1 最大ひずみ | T2-1 繰返し回数 | T2-1 地表加速度 |
|---|---|---|---|---|
| 2 m | 0.66 % | 2.82 % | 19 | 1133 gal |
| 1 m | 0.70 % | 2.90 % | 19 | 1133 gal |
| 0.5 m | 0.73 % | 2.92 % | 21 | 1133 gal |
| 0.25 m | 0.74 % | 2.92 % | 24 | 1133 gal |
ひずみは軟らかい側に集中し、GL−12 m の直上では直下の 6.5 倍となりました。GL−4 m では Vs がほぼ同じでも、γ0.5 の小さい砂質土(As1)の側でひずみが大きくなっています。地表加速度や全体の最大ひずみは分割厚 2 m でもほぼ変わりませんが、層境界直上のひずみは分割を細かくするほど大きく出ます(GL−4 m 直上:0.5 m 分割で 1.14 %、0.25 m 分割で 1.45 %)。地中構造物の位置が層境界に近い場合は、境界付近を細かく分割して、局所的なひずみ・相対変位を確認します。
有効ひずみ係数の影響
有効ひずみ係数 α は、不規則な地震動の最大ひずみを等価な定常ひずみに置き換える係数で、一般に 0.65 が用いられます【要確認:適用基準での規定】。α を 0.50〜1.00 に変えて結果への影響を確認しました。

| α | 地表加速度 T1-1 | 地表加速度 T2-1 | 最大ひずみ T1-1 | 最大ひずみ T2-1 | 卓越周期 T1-1 | 卓越周期 T2-1 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| α = 0.50 | 751 gal | 1117 gal | 0.56 % | 1.82 % | 0.567 s | 0.773 s |
| α = 0.65 | 730 gal | 1133 gal | 0.73 % | 2.92 % | 0.646 s | 0.900 s |
| α = 0.80 | 673 gal | 1017 gal | 0.84 % | 3.26 % | 0.719 s | 1.024 s |
| α = 1.00 | 583 gal | 1012 gal | 0.96 % | 27.01 %(収束せず) | 0.815 s | 1.122 s |
α を大きくするほど剛性が小さく評価され、卓越周期は長く、ひずみは大きくなります。T1-1 では地表加速度が α = 0.50 の 751 gal から α = 1.00 の 583 gal まで約 22 % 変化しました。T2-1 で α = 1.00 とすると 40 回の繰返しでも収束せず、最大ひずみは 27 % という非現実的な値になりました。ひずみが大きい領域では等価線形法の前提(剛性・減衰を一定値で代表させること)が成り立ちにくくなるため、収束しない・ひずみが数 % を超える場合は、時刻歴の非線形解析による確認を検討します【要確認:等価線形法の適用ひずみの目安は基準・文献により異なる】。
まとめ
初期剛性の卓越周期は 4ΣH/Vs で 0.45 s、固有値解析で 0.397 s。剛基盤の伝達関数のピークと固有値解析が一致することを照合した。
繰返し回数はタイプⅠで 8〜19 回、タイプⅡで 21〜24 回。収束後の卓越周期は 0.65〜0.95 s に伸び、地表変位は線形計算の 2〜4 倍となった。
τ は層境界で連続、γ は剛性比に応じて不連続。GL−12 m では直上のひずみが直下の 6.5 倍で、局所値は分割厚に左右される。
α = 0.50〜1.00 で地表加速度は最大約 22 % 変化。ひずみが大きい条件では α = 1.00 で収束しないケースがあった。
本試算の適用範囲と限界
- 1次元の等価線形解析(鉛直下方からの SH 波)です。地形・地層の傾斜、液状化、過剰間隙水圧の影響は考慮していません。
- 動的変形特性は HD モデルの仮定値です。実務では土質試験(繰返し三軸・中空ねじり等)の結果を用います。
- 収束判定 1 %・最大 40 回は本試算での設定です。等価線形法の適用範囲(ひずみの目安)は基準・文献により異なります【要確認】。
ご注意
- 本ページの数値は仮想事例に対する試算結果であり、他の地盤・構造物にそのまま適用することはできません。
- 解析結果は、技術者による検証と照査を経て設計に用いることを前提としています。
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