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2026.04.14
耐震解析断面力整理
耐震解析断面力整理
技 術 報 告 書
Mz・Sy・N の抽出・整理と業務効率化のポイント
作成部門 | 耐震解析グループ |
対象業務 | 地下構造物 耐震解析 |
文書番号 | SF-001 |
作成日 | 2026年 |
1.はじめに
耐震解析業務において、解析そのもの以上に時間を要するのが、解析結果(断面力)の整理作業である。
特に地下構造物では、以下の3要素を各部材・各ケースごとに整理し、照査可能な形に変換する必要がある。
● 曲げモーメント(Mz)
● せん断力(Sy)
● 軸力(N)
本報告書では、実務における断面力整理の標準的な作業フロー、主要な実務課題、発生しやすいミスの類型、
業務負荷の実態、および効率化の方向性について体系的に整理する。
2.断面力整理の基本フロー
一般的な実務フローは以下のSTEP 1〜5の通りである。各工程の目的と留意点を踏まえた作業が、品質確保の前提となる。
ステップ | 作業内容 | 詳細・ポイント |
STEP 1 | 解析結果の出力 | MIDAS / Engineer Studio 等から CSV・Excel 形式で出力。各ケースごとにデータ取得。 |
STEP 2 | データの統合 | 複数ケース(地震方向・波形)を統合し、Max / Min を抽出。 Mmax = max(M₁, M₂, ..., Mₙ) |
STEP 3 | 位置情報の整理 | 部材番号・距離(D列)・節点情報を整理。特に地下構造では「距離ベース管理」が重要。 |
STEP 4 | 照査位置の特定 | 端部・中央部・最大応力位置を特定。必要に応じて補間計算を実施。 |
STEP 5 | 図表化・帳票化 | Excel表・グラフ(Mz図・Sy図)・照査用一覧を作成。 |
3.実務上の主要課題
断面力整理作業には、以下に示す5つの主要課題が存在する。いずれも手作業では対応が困難であり、業務品質と効率の双方に影響を与える。
No. | 課題項目 | 内容・影響 |
① | データ量の膨大さ | ケース数:数十〜数百、部材数:数十〜数百。手作業では非現実的な処理量となる。 |
② | Max/Min抽出の複雑性 | 各ケースごとに異なるピーク位置が存在し、同一位置での比較が必要。単純な最大値抽出では不十分。 |
③ | 距離ベースのグループ管理 | 地下構造物では距離D=0を基準にグループ分割などの処理が必要となる。 |
④ | 照査位置との対応 | 「解析点」と「照査点」が一致しないケースが多く、補間処理が必要となる。 |
⑤ | グラフと数値の整合 | Mz図のピーク位置・Syの符号変化点の可視化と数値の一致が品質確保に重要。 |
👉 距離D = 0 を基準にしたグループ分割処理は、地下構造物特有の重要な工程である。
4.よくあるミスと品質リスク
断面力整理工程では、以下のミスが多発しやすく、品質問題の多くはこの工程で発生する。
● Max / Min の取り違え(特に符号が混在する場合)
● 距離順の並び替えミス(部材の連続性が損なわれる)
● ケース抜け(一部の地震方向・波形の未処理)
● 単位ミス(kN・kN・m 等の混在)
● グラフと表の数値不一致(最終成果物の整合性欠如)
⚠ 品質問題の多くはこの整理工程で発生する。検査・照査プロセスの強化が不可欠である。
5.業務負荷の実態
耐震解析業務全体における工数配分の実態は、以下の通りである。整理作業が解析作業を上回るケースが多い点が特徴的である。
作業区分 | 標準所要日数 | 備考 |
解析作業 | 1〜2日 | モデル構築・計算実行 |
断面力整理 | 2〜4日 | ケース統合・Max/Min抽出・照査表作成 |
修正・再計算対応 | 追加1〜3日/回 | 条件変更・波形追加等のたびに発生 |
さらに、条件変更・波形追加・設計変更等が発生した場合、修正対応が複数回にわたり発生する。
このような再計算・再整理の繰り返しにより、作業工数は指数的に増加する傾向がある。
6.業務効率化のポイント
上記課題を解消し、業務品質・生産性を両立するための効率化アプローチは以下の4点に整理される。
効率化項目 | 具体的アプローチ |
データ構造の統一 | CSVフォーマット統一・列構成の固定により入力エラーを防止 |
自動処理の導入 | Max/Min抽出・グループ分割・照査位置抽出を自動化 |
可視化の自動化 | グラフ生成・重要点マーク・マーカー表示を自動出力 |
再現性の確保 | 同条件で同じ結果が得られる仕組みを構築し手作業を排除 |
7.自動化ツールの活用事例(SF-Works)
近年、これらの課題に対して断面力整理を自動化するツールの活用が進んでいる。株式会社ランドプラスでは、SF-Works(断面力自動整理システム)を開発・運用しており、以下の機能を提供している。
● 複数ケースの一括処理(地震方向・波形を含む全ケース統合)
● Max / Min の自動抽出(部材・位置ごとの正確な比較)
● 距離ベースのグループ分割(D=0 基準での自動区分)
● 照査位置の自動反映(解析点と照査点の対応付け)
● Excel・グラフの自動生成(Mz図・Sy図・照査用一覧)
作業時間 数日 → 数分〜数十分 大幅短縮 | 人的ミス 多発リスクあり 大幅削減 | 品質均一性 担当者依存 標準化・均一化 |
8.今後の方向性
耐震解析業務においては、「解析」そのものの精度向上のみならず、「解析結果をどう整理・活用するか」というプロセス全体の最適化が今後の競争力の源泉となる。以下の3要素が今後の必須要件として挙げられる。
● データ整理プロセスの標準化・自動化
● 可視化ツールの高度化(インタラクティブ図表・ダッシュボード化)
● 自動化を前提とした業務設計・人材育成
👉 「整理の自動化」は品質保証の基盤であり、今後の標準業務フローへの組み込みが求められる。
9.まとめ
断面力整理は以下の特性を持つ、耐震解析業務における最重要工程の一つである。
● 業務負荷が高く、解析よりも整理に多くの工数を要する
● ミスが発生しやすく、品質問題の主要発生源となる
● 成果物の品質に直結し、照査・設計の信頼性を左右する
今後は、SF-Works 等の自動化ツールを活用した「自動化を前提とした業務設計」を推進し、人的ミスの排除・品質の均一化・生産性向上を三位一体で実現することが求められる。
10.補足
本報告書は、耐震解析業務における断面力整理の実務経験に基づき整理したものである。記載内容は一般的な実務環境を前提としており、プロジェクトの規模・条件・使用ソフトウェアにより適宜読み替えが必要な場合がある。