2池式・地下式の矩形RC配水池を対象に、躯体全体をシェル要素で立体的にモデル化し、常時とレベル1地震時(応答変位法)の静的弾性解析を行いました。荷重の算定、断面力の抽出、許容応力度法による照査、奥行1mの2次元帯モデルとの比較までを、数値を追える形で掲載します。
掲載事例について
本ページの施設構成・寸法・地盤条件・荷重条件は、技術説明のために設定した仮想事例(仮定値)であり、実案件の情報は含みません。数値は社内の3次元骨組・平板解析プログラムによる試算結果です。別の社内FEMプログラムでも同一条件で解析し、主要着目点の断面力の差が3%以内であることを確認しています。指針の規定値・係数は、実設計では適用基準と地盤調査結果に基づき個別に設定します。
検討対象と解析の目的
| 構造形式 | RC造 地下式矩形配水池(2池) |
| 平面寸法(部材中心) | 30.0 m × 20.0 m(1池 15.0 m × 20.0 m) |
| 高さ(底版〜頂版中心) | 5.5 m(有効水深 4.5 m) |
| 土被り | 1.0 m(頂版上面〜地表面) |
| 部材厚 | 頂版 0.35 m/側壁 0.50 m/中壁 0.40 m/底版 0.70 m |
| 中柱 | □500 mm × 12本(5.0 m 間隔) |
| 解析手法 | 3次元FEM 静的弾性解析(常時・L1地震時) |
この解析で確認したこと
- 中壁が「耐震壁」として負担する面内せん断力の割合
- 側壁の板としての挙動(隅角部の水平曲げ、奥行方向の断面力分布)
- 奥行1mの2次元帯モデルとの差(どこで大きく、どこで小さいか)
- 想定配筋による許容応力度照査(常時・L1地震時)

設計条件(仮定値)
| 材料・許容応力度 | |
|---|---|
| コンクリート | σck = 24 N/mm²、Ec = 25 kN/mm²、ν = 0.2、γc = 24.5 kN/m³ |
| 鉄筋 | SD345、ヤング係数比 n = 15 |
| 常時 | σca = 8.0 N/mm²、σsa = 160 N/mm²(水密性を考慮した仮定値) |
| L1地震時 | σca = 12.0 N/mm²、σsa = 240 N/mm²(常時の1.5倍) |
| 地盤・地震動 | |
|---|---|
| 土の単位体積重量 | γt = 18.0 kN/m³、上載荷重 q = 10.0 kN/m² |
| 静止土圧係数 | K0 = 0.5(地下水位は底版下面以深) |
| 地盤反力係数 | kv = 40,000 kN/m³、kH = 20,000 kN/m³、せん断ばね ks = k/3 |
| 表層地盤 | 層厚 H = 20 m、平均せん断波速度 Vs = 150 m/s |
| L1地震動 | 応答速度 Sv = 0.25 m/s、設計水平震度 kh = 0.20 |
※ いずれもモデルケースとして設定した値です。Sv・kh・許容応力度・地盤反力係数は、実設計では適用する指針(水道施設耐震工法指針・解説 等)の規定と地盤調査結果から個別に定めます。
解析モデルと境界条件
部材中心線によるシェルモデル
頂版・側壁・中壁・底版を4節点平板シェル要素(Mindlin 板理論、せん断変形考慮、水平1.0 m × 鉛直0.5 m)で分割し、中柱は梁要素としました。部材の交差部は節点を共有させ、剛域・ハンチは考慮していません。
地盤ばね(節点の支配面積で換算)
平板地盤ばねとして、底版は法線 kv・面内 kv/3、側壁は法線 kH・面内 kH/3、頂版は面内 kH/3 を各要素に設定し、支配面積に応じて節点ばねに換算しています。引張側のばね抜けは考慮しない線形解析です。
断面力の抽出と符号
各要素の中心で算出した断面力を用います。曲げモーメントは「内側引張を正」に統一しました。側壁基部の着目点は要素中心 z = 0.25 m です。
比較用の2次元帯モデル
同じプログラムで y = 10 m 断面を奥行1 m 切り出し、面外方向の変位・回転を拘束しました。中柱は奥行5 m 間隔の剛性を1 m 当たりに換算しています。荷重・ばねは3次元モデルと同一です。
荷重ケースと荷重の算定(計算過程)
| ケース | 区分 | 荷重の組合せ |
|---|---|---|
| C1 | 常時(満水) | 躯体自重+土被り・上載荷重+静止土圧+内水圧(両池満水) |
| C2 | 常時(空水) | 躯体自重+土被り・上載荷重+静止土圧 |
| C5 | 常時(片池空水) | C2 + 右池のみ内水圧(中壁に片側から水圧が作用) |
| C3 | L1地震時 X方向(満水) | C1 + 応答変位法による地震時荷重(中壁に直交する方向) |
| C4 | L1地震時 Y方向(満水) | C1 + 応答変位法による地震時荷重(中壁に平行な方向) |
| 比較 | 2次元帯 C1・C2・C3/中壁なし C1・C4 | モデル化の違いによる断面力・変位の差を確認 |
常時荷重
L1地震時荷重(応答変位法)
周面せん断力の向き:頂版は地盤変位の方向、底版は逆方向に作用させ、側壁の鉛直せん断力は両者の偶力を打ち消す向きとしました。地盤ばねの反力により、構造全体の釣合いが保たれます。土圧・水圧・地盤変位・動水圧は高さ方向の分布表(0.05 m 刻み)として入力し、各節点位置で評価しています。
解析結果① 常時 ─ 釣合いの確認と2次元との一致
解析結果を使う前に、載荷した鉛直荷重の合計と地盤ばね反力の合計が一致することを確認しました。手計算の荷重合計とも一致しています。
| ケース | 躯体自重 | 頂版荷重 | 内水重量 | 荷重合計(手計算) | ばね反力合計(解析) |
|---|---|---|---|---|---|
| C1 満水 | 23,655 kN | 16,800 kN | 26,478 kN | 66,933 kN | 66,933 kN |
| C2 空水 | 23,655 kN | 16,800 kN | ─ | 40,455 kN | 40,455 kN |
頂版荷重 = 28.0 kN/m² × 600 m²、内水重量 = 44.1 kN/m² × 600 m²。
奥行中央(y = 10 m)では、3次元と2次元帯の鉛直曲げモーメントはほぼ一致します(基部 −67.3 と −66.6 kN·m/m)。常時の土圧・水圧に対しては、奥行中央の評価に2次元帯モデルが使えることを確認できます。
一方、隅角部に近づくと側壁基部の鉛直曲げは小さくなり(y = 0.5 m で −14.1 kN·m/m)、代わって水平方向の曲げ(−27.8 kN·m/m)が生じます。側壁が三辺で支持された板として働くためで、2次元帯モデルでは現れない断面力です。
解析結果② L1地震時 X方向 ─ 側壁は板として働く


地震時の地盤変位を受ける側壁の基部では、3次元の曲げモーメントは2次元帯の約0.67倍(−159.3/−237.1 kN·m/m)にとどまりました。直交する側壁と頂版が側壁を拘束し、荷重の一部が奥行方向へ伝わるためです。
一方で、壁の中間高さでは1.29倍、頂部(頂版との接合部付近)では3次元の方が大きくなります。頂版が水平面内に硬い板(ダイアフラム)として働き、側壁頂部の水平変位を抑えるためです。
解析結果③ L1地震時 Y方向 ─ 中壁は耐震壁として働く
中壁に平行な方向(Y方向)の地震時について、同じ条件で中壁を取り除いた比較モデルを作り、壁の中間高さ(z = 2.75 m)で各壁が受け持つ面内せん断力を集計しました。

中壁は単なる隔壁ではなく、平行方向の地震力の過半を受け持つ耐震壁として働いています。中壁に開口・目地を設ける場合や、補強工法で中壁を改変する場合には、この面内せん断力の伝達を前提とした検討が必要です。2次元断面のモデルでは、この分担は評価できません。
断面照査(許容応力度法)
σc = 2M /(k·j·b·d²)、σs = M /(As·j·d)
応力度比 = max(σc/σca、σs/σsa)
軸力は無視しています(各部材とも圧縮軸力が作用するため安全側)。
k = 0.3375、j = 0.8875
σc = 2 × 159.3×10⁶ /(0.3375 × 0.8875 × 1000 × 400²)= 6.65 ≦ 12.0
σs = 159.3×10⁶ /(2,292 × 0.8875 × 400)= 195.8 ≦ 240
| 部材 | 区分 | 引張側 | 最大値の発生ケース・位置 | M [kN·m/m] | t/d [mm] | 配筋(仮定) | σc/σca | σs/σsa | 応力度比 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 側壁 | 常時 | 内側 | C2・鉛直方向 | 39.6 | 500/400 | D19@125 | 1.65/8.0 | 48.7/160 | 0.30 | OK |
| 側壁 | 常時 | 外側 | C5・鉛直方向 | 81.4 | 500/400 | D19@125 | 3.40/8.0 | 100.1/160 | 0.63 | OK |
| 側壁 | L1地震時 | 内側 | C3・鉛直方向 | 110.8 | 500/400 | D19@125 | 4.63/12.0 | 136.2/240 | 0.57 | OK |
| 側壁 | L1地震時 | 外側 | C3・鉛直方向(基部) | 159.3 | 500/400 | D19@125 | 6.65/12.0 | 195.8/240 | 0.82 | OK |
| 中壁 | 常時 | 片側 | C5(片池空水)・鉛直方向 | 62.8 | 400/300 | D16@125 | 4.79/8.0 | 147.8/160 | 0.92 | OK |
| 中壁 | L1地震時 | 片側 | C3・鉛直方向 | 41.3 | 400/300 | D16@125 | 3.15/12.0 | 97.2/240 | 0.41 | OK |
| 頂版 | 常時 | 内側 | C5・X方向 | 52.8 | 350/270 | D19@125 | 4.24/8.0 | 98.2/160 | 0.61 | OK |
| 頂版 | 常時 | 外側 | C5・Y方向 | 66.1 | 350/270 | D19@125 | 5.31/8.0 | 123.0/160 | 0.77 | OK |
| 頂版 | L1地震時 | 内側 | C3・X方向 | 53.9 | 350/270 | D19@125 | 4.33/12.0 | 100.2/240 | 0.42 | OK |
| 頂版 | L1地震時 | 外側 | C4・Y方向 | 72.1 | 350/270 | D19@125 | 5.79/12.0 | 134.1/240 | 0.56 | OK |
| 底版 | 常時 | 内側 | C5・X方向 | 58.0 | 700/600 | D19@125 | 1.24/8.0 | 46.6/160 | 0.29 | OK |
| 底版 | 常時 | 外側 | C5・X方向 | 85.2 | 700/600 | D19@125 | 1.83/8.0 | 68.5/160 | 0.43 | OK |
| 底版 | L1地震時 | 内側 | C3・X方向 | 128.0 | 700/600 | D19@125 | 2.75/12.0 | 102.9/240 | 0.43 | OK |
| 底版 | L1地震時 | 外側 | C3・X方向 | 142.3 | 700/600 | D19@125 | 3.06/12.0 | 114.4/240 | 0.48 | OK |
M は各部材・各区分の全要素から抽出した最大値(要素中心値)です。中壁は両池満水では左右の水圧が釣り合うため、片池空水(C5)が支配ケースとなりました(応力度比 0.92)。かぶりは鉄筋中心まで 100 mm(頂版 80 mm)としています。
2次元帯モデルとの比較(L1地震時 X方向、y = 10 m)
| 着目位置 | 2次元帯 M | 3次元 M | 比(3次元/2次元) | σs 2次元 | σs 3次元 |
|---|---|---|---|---|---|
| 側壁 基部 | −237.1 | −159.3 | 0.67 | 291.3 | 195.8 |
| 側壁 中間高さ | 82.0 | 106.2 | 1.29 | 100.8 | 130.5 |
| 中壁 基部 | −92.8 | −41.3 | 0.44 | 218.6 | 97.2 |
| 頂版 側壁接合部 | −25.4 | −67.4 | 2.65 | 47.3 | 125.4 |
| 底版 側壁接合部 | −210.7 | −142.0 | 0.67 | 169.4 | 114.1 |
M の単位は kN·m/m、σs の単位は N/mm²(08 と同じ配筋で算定。L1 の σsa = 240 N/mm²)。2次元帯だけで評価すると側壁基部は σs = 291.3 N/mm² となり配筋の増加が必要と判断されますが、3次元では 195.8 N/mm² です。反対に頂版の側壁接合部は、3次元で約2.7倍の曲げモーメントとなります。
まとめ ─ 3次元モデルで分かったこと
常時の奥行中央では3次元と2次元帯がほぼ一致し、2次元帯モデルの妥当性を確認できた。
L1地震時は側壁が板として働き、基部の曲げは2次元の0.67倍。ただし壁中間・頂版接合部は3次元の方が大きい。
中壁は平行方向の面内せん断力の52%を負担する耐震壁。中壁がないと頂版の相対変位は約2.6倍になる。
中壁の配筋は地震時ではなく常時の片池空水で決まる。運用条件(池ごとの清掃・点検)を荷重ケースに反映することが重要。
本試算の適用範囲と限界
- 線形弾性解析で、地盤ばねの引張側の抜け(浮上り・剥離)は考慮していません。
- L2地震時の照査(非線形・耐力照査)、せん断照査、ひび割れ幅、最小鉄筋量、隅角部補強は対象外です。
- 断面力は要素中心値です。部材交差部の局所的な値は要素寸法の影響を受けるため、実設計ではメッシュ感度を確認します。
- 剛域・ハンチ、地下水位、地盤の層構成は簡略化しています。
ご注意
- 本ページの数値は仮想事例に対する試算結果であり、他の施設にそのまま適用することはできません。
- 設計条件・荷重組合せ・許容値は、適用基準と施設ごとの条件に基づき個別に設定・確認する必要があります。
- 解析結果は、技術者による手計算での検算と照査を経て設計に用いることを前提としています。
配水池・池状構造物の3次元解析のご相談
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この事例で使った解析方法の資料
手法の考え方・照査の流れは技術資料にまとめています。