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解析例・計算例

浄水場配水池の耐震解析 ― 2次元FEMによる地盤変状解析

ISSUE
課題・ご依頼の背景
軟弱な粘性土層を含む地盤に埋設された地下式RC配水池では、強震時の地盤のせん断変形が池体の変形・断面力を支配します。地盤の非線形性を考慮しない場合にどの程度結果が変わるかを、地盤-構造物連成の動的解析で確認することを目的としました。
SCOPE
担当範囲
横断面の2次元FEMモデル作成(地盤要素1,860・躯体梁要素90)、レベル2相当の地震動を基盤入力とする時刻歴応答解析(地盤 非線形/線形の2ケース)、自由地盤と池体の層間変位の比較、骨組解析による躯体の層間変形剛性と剛性比(フレキシビリティ比)の整理。
RESULT
成果・結果
粘性土層のせん断ひずみは最大約3%に達し、地盤を非線形とすると池体の層間変位は自由地盤の約0.69倍、線形とすると約1.74倍と大小関係が逆転しました。剛性比F(線形3.45、非線形0.89)でこの逆転を説明でき、地盤を線形とすると躯体の曲げモーメントを約2〜3倍に見積もることを確認しました。

地下式の2池式RC配水池を横断面で切り出し、周辺地盤とあわせて2次元FEMでモデル化しました。レベル2相当の強い地震動を基盤から入力する時刻歴応答解析を、地盤を非線形(ひずみ依存)とした場合と線形のまま扱った場合の2ケースで行い、地盤のせん断変形が池体の変形・断面力へどう伝わるかを比較しました。さらに躯体単体の層間変形剛性を骨組解析で求め、地盤との剛性比から結果を読み解いています。

掲載事例について

本ページの施設構成・寸法・地盤条件・入力地震動の扱いは、技術説明のために設定した仮想事例(仮定値)であり、実案件の情報は含みません。数値は社内の2次元動的FEM解析プログラム(地盤-構造物連成、時刻歴)と社内の骨組解析プログラムによる試算結果で、図表はいずれもその出力から作成しています。実設計では、適用基準・地盤調査結果・入力地震動の設定根拠に基づき条件を個別に設定します。

節点数
2,011
地盤要素(四辺形)
1,860
躯体の梁要素
90
時間ステップ
3,980(Δt=0.005 s)
比較ケース
2(地盤 非線形/線形)
01

検討対象と解析の目的

構造形式RC造 地下式矩形配水池(2池)の横断面
断面寸法(部材中心)幅 30.0 m(1池 15.0 m)× 高さ 5.5 m
頂版中心の深さGL−1.175 m
部材厚頂版 0.50 m/側壁 0.70 m/中壁 0.50 m/底版 0.90 m
地盤3層(砂質土・粘性土・砂質土)、層厚計 30 m
解析手法2次元FEM 時刻歴応答解析(地盤-構造物連成)
比較地盤 非線形(修正R-Oモデル)/地盤 線形

この解析で確認したこと

  1. 強震時に地盤がどこで大きくせん断変形するか(層ごとのひずみレベル)
  2. 池体の層間変位は周辺の自由地盤と比べて大きいか小さいか
  3. 地盤の非線形性を考慮しない場合、池体の変形・断面力をどの程度見誤るか
  4. その差を、地盤と躯体の剛性比(フレキシビリティ比)で説明できるか
配水池横断面と周辺地盤の2次元FEMモデル。上は全体、下は躯体周辺の拡大
図-1 解析モデル(上:全体、下:躯体周辺拡大。紺線=躯体の梁要素、地盤要素と節点を共有)
02

解析条件(仮定値)

地層深さ (m)γt (kN/m³)Vs (m/s)G0 (kN/m²)νhmaxγ0.5
As1 砂質土0〜418.014035,9760.450.211.0×10−3
Ac 粘性土4〜1216.012023,4940.490.171.8×10−3
As2 砂質土12〜3019.022093,7730.450.211.0×10−3

G0 = γt/g・Vs²。非線形ケースでは修正R-Oモデル(hmax、γ0.5)で剛性低下と履歴減衰を表現。線形ケースは同じ G0 のまま。

躯体線形梁要素(E = 2.5×107 kN/m²、ν = 0.2、奥行1 m)
地盤と躯体節点共有(剥離・滑りは考慮しない)
底面境界GL−30 m を剛基盤とし、加速度を入力
側方境界左右端の同じ高さの節点を等変位で結合(自由地盤の模擬)
モデル幅120 m(躯体幅の4倍)
数値積分Newmark β法(β = 1/4)、Δt = 0.005 s、3,980 ステップ
減衰Rayleigh 減衰 h = 2 %(f1 = 1.412 Hz と 5f1 で設定)
地盤の固有振動数f1 = 1/(4ΣH/Vs) = 1.412 Hz(T = 0.708 s)
入力地震動道路橋示方書のレベル2地震動(タイプII、I種地盤)標準波形 II-I-1 の先頭 20 秒
最大入力加速度812 gal
-500050005101520時刻 (s)加速度 (gal)
図-2 基盤に入力した加速度波形(表示は 0.05 s 間隔に間引き。解析は 0.01 s 間隔の原波形を使用)
POINT

地表面で定義された標準波形を剛基盤にそのまま入力しているため、基盤入力としては大きめ(安全側)の設定です。実設計では、工学的基盤での地震動の定義、入力位置(露頭波/入射波)を適用基準に沿って整理します。

03

自由地盤の応答 ― ひずみの集中と剛性低下

自由地盤(モデル左端の地盤柱)の応答を深さ方向に整理しました。地表面の最大相対変位は、非線形ケース 279 mm、線形ケース 360 mm です。せん断ひずみはどちらのケースでも軟らかい粘性土層(Ac)に集中し、最大で約 3 % に達します。

-30-25-20-15-10-500100200300400最大水平変位(基盤に対する相対値)(mm)深さ z (m)地盤 非線形地盤 線形
図-3 自由地盤の最大水平変位分布
-30-25-20-15-10-5000.511.522.533.5最大せん断ひずみ |γxy| (%)深さ z (m)地盤 非線形地盤 線形
図-4 自由地盤の最大せん断ひずみ分布

層ごとの最大せん断ひずみ(全要素の最大値)

地層非線形 γmax (%)非線形 γmax / γ0.5線形 γmax (%)
As1 砂質土1.0910.91.31
Ac 粘性土2.9916.62.96
As2 砂質土1.1511.51.17
最大せん断ひずみの分布図。上が地盤非線形ケース、下が地盤線形ケース
図-5 最大せん断ひずみ |γxy|max の分布(上:地盤非線形、下:地盤線形。各要素の時刻歴最大値)
POINT

粘性土層の最大せん断ひずみは基準ひずみ γ0.5 の十数倍に達しており、剛性が大きく低下した状態です。ひずみの最大値は両ケースで近い値ですが、地盤の剛性・減衰が異なるため、地表変位や後述の池体の変形は大きく異なります。

04

池体の変形 ― 自由地盤との比較

頂版位置と底版位置の水平変位差(層間変位 δ)で池体の変形を評価しました。比較のため、モデル端部の自由地盤でも同じ高さの2点間の変位差を求めています。

ケース池体 δmax (mm)生起時刻 (s)自由地盤 δmax (mm)池体/自由地盤池体の層間変形角
地盤 非線形47.55.9368.50.691/116
地盤 線形103.57.7359.61.741/53
020406080100120-60-40-200204060水平位置 x (m) ※ −15〜15 m が池体層間変位 δ (mm)← 池体 →地盤 非線形(t = 5.93 s)地盤 線形(t = 7.73 s、符号反転して表示)
図-6 池体の層間変位が最大となる時刻における、水平位置ごとの層間変位(GL−1.175 m と GL−6.675 m の変位差)
-5005005101520時刻 (s)層間変位 δ (mm)池体(側壁 頂版位置-底版位置)自由地盤(同じ高さの2点間)
図-7 地盤非線形ケースの層間変位の時刻歴(池体と自由地盤。0.05 s 間隔に間引いて表示)
地盤非線形ケースで池体の層間変位が最大となる時刻の変形図とせん断ひずみ分布
図-8 地盤非線形ケース t = 5.93 s の変形図(底版中央に対する相対変位を40倍表示、色はその時刻のせん断ひずみ)
POINT

地盤を非線形とすると池体の層間変位は自由地盤の約 69 % に収まり、池体が周辺地盤の変形を抑える側に働きます。一方、地盤を線形のまま扱うと池体の層間変位は自由地盤の約 1.7 倍となり、池体の周辺で地盤の変形が集中する逆の結果になります(図-6)。また非線形ケースの自由地盤は、主要動の後に片側へずれた状態で振動しており(18〜20 s の平均で約 18 mm)、地盤に残留変形が生じていることがわかります(図-7)。

05

剛性比による解釈(躯体の骨組解析)

ケース間で池体と自由地盤の関係が逆転した理由を、地盤と躯体の剛性比で確認しました。躯体だけを取り出した骨組モデル(奥行1 m、底版を鉛直支持)の頂版に水平力を与え、層間変形剛性 S を求めています。

躯体の層間変形剛性(骨組解析)
S = P / δ = 1,000 / 21.14×10−3 = 47,306 kN/m
P:頂版に与えた水平力の合計(奥行1 m あたり)、δ:頂版と底版の平均水平変位の差
フレキシビリティ比
F = (G · W) / (S · H)
G:躯体高さ範囲の地盤のせん断剛性、W = 30 m(躯体幅)、H = 5.5 m(躯体高さ)。F > 1 は躯体が地盤より変形しやすいことを示す
ケース地盤のせん断剛性 G の取り方G (kN/m²)F池体/自由地盤(動的解析)
地盤 線形初期せん断剛性 G0(層厚加重平均)29,9053.451.74
地盤 非線形自由地盤の割線剛性 τmax/γmax(躯体高さ範囲10要素の平均)7,7140.890.69

非線形ケースの G は、自由地盤の各要素で τ と γ の最大値がほぼ同時刻(5.93〜5.97 s)に生じていることを確認したうえで τmax/γmax を求めた目安値です。

POINT

線形ケースでは F = 3.4 と躯体の方が変形しやすく、池体の変形が自由地盤を上回ります。非線形ケースでは強震時に地盤の剛性が初期の約 1/4 まで低下して F = 0.89 となり、躯体の方が硬くなります。地盤の非線形性の扱いが、池体に生じる変形の大小関係そのものを左右することがわかります。

06

躯体の断面力

躯体の梁要素の各要素端について、曲げモーメントの時刻歴最大値を比較しました(奥行1 m あたり)。

部材地盤 非線形 (kN·m/m)地盤 線形 (kN·m/m)線形/非線形
頂版8202,2852.79
側壁2,2446,7953.03
中壁1,8663,8742.08
底版2,2446,7953.03
躯体の曲げモーメント最大値の分布。左が地盤非線形ケース、右が地盤線形ケース
図-9 躯体の曲げモーメント |M| の時刻歴最大値(各要素端の値を部材の外側に描画)
POINT

どちらのケースも最大値は側壁下端と底版の隅角部に生じ、地盤を線形とした場合は非線形の約 2〜3 倍となりました。本試算は躯体を線形梁としているため、ここでの値は「躯体が弾性のままと仮定した場合の応答」です。この規模の値は一般的な部材断面の耐力を上回る可能性が高く、レベル2の耐震性能照査では部材の非線形性(M−φ関係)を考慮した解析が必要になります。

07

まとめ

01

強震時、軟らかい粘性土層のせん断ひずみは約 3 %(γ0.5 の十数倍)に達し、地盤の剛性は大きく低下する。

02

地盤を非線形とすると池体の層間変位は自由地盤の約 69 %、線形とすると約 1.7 倍と、大小関係が逆転する。

03

逆転の理由は剛性比で説明できる(F:線形 3.4 → 非線形 0.89)。地盤の非線形性の扱いが結果を左右する。

04

地盤を線形とすると躯体の曲げモーメントを約 2〜3 倍に見積もる。L2照査では地盤と部材の両方の非線形性を適切に扱うことが重要。

本試算の適用範囲と限界

  • 2次元(横断面・奥行1 m)の解析で、奥行方向の妻壁・中柱の効果、3次元的な応力分担は考慮していません。
  • 躯体は線形梁で、ひび割れ・降伏による剛性低下、せん断耐力・曲げ耐力の照査は対象外です。
  • 地盤と躯体の境界の剥離・滑り、地下水・液状化、内水の動水圧、常時荷重(土圧・水圧)との組合せは考慮していません。
  • 入力地震動は地表面で定義された標準波形を剛基盤に入力した一つの設定です。入力の定義・位置により結果は変わります。
  • 減衰は Rayleigh 減衰(2 %)で一律に与えています。高次モードの減衰の与え方により応答は変化します。

ご注意

  • 本ページの数値は仮想事例に対する試算結果であり、他の施設にそのまま適用することはできません。
  • 設計条件・入力地震動・地盤定数は、適用基準と地盤調査結果に基づき個別に設定・確認する必要があります。
  • 解析結果は、技術者による検証と照査を経て設計に用いることを前提としています。
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