応答変位法では、地中構造物の周囲に地盤ばねを配置し、そのばねを介して地盤の相対変位を構造物に作用させます。地盤ばねの値は「どの変形係数を使うか」で大きく変わり、設計者によって設定が分かれやすい項目です。本稿では、解析例6と同じ2連ボックスカルバートを対象に、地盤ばねの設定方法を3通りに変え、さらにばね値を 0.25〜16 倍に振って、函体の層間変位と断面力がどう変わるかを確認しました。あわせて、頂版のせん断ばねにも地盤変位を作用させるかどうか(荷重の与え方)の違いも比較しています。
掲載内容について
本ページの構造物・地盤条件・入力地震動は、技術説明のために設定した仮想事例(仮定値)であり、実案件の情報は含みません。数値は社内の2次元骨組解析プログラムと地盤応答解析プログラムによる試算結果です。地盤ばねの算定式・荷重の与え方は、適用する基準類と施設管理者の方針により確認が必要です【要確認】。
検討条件と3通りの地盤ばね
| 構造物 | RC 2連ボックスカルバート(内空 4.0×3.5 m ×2室、土被り 3.0 m、外形 9.4×4.6 m、頂版 0.50・底版 0.60・側壁 0.50・中壁 0.40 m) |
| 地盤応答 | 解析例6と同じ等価線形の1次元解析(道路橋示方書 レベル2 Ⅰ種地盤用 タイプⅠ・Ⅱ 各3波)。函体の頂版・底版位置の相対変位が最大となる時刻の地盤変位・周面せん断力・加速度を用いる |
| 荷重 | ①側壁ばねを介した地盤の相対変位(底版位置基準)②周面せん断力(頂版・底版・側壁)③躯体慣性力。全ケース共通 |
| 地盤反力係数 | k = E/0.3 ×(B/0.3)^(−3/4)(道路橋示方書 下部構造編の推定式を準用【要確認:版・条項】)。B:側壁は函体高 4.6 m、頂版・底版は函体幅 9.4 m。せん断ばねは鉛直ばねの 1/3 |
| 比較対象 | 地震時増分の断面力(常時荷重は含まない)と、函体中央の頂版−底版の水平相対変位(層間変位) |

| 方法 | 変形係数 E | 側壁 kH(T2-2) | 頂版 kV | 底版 kV |
|---|---|---|---|---|
| A | 動的変形係数 ED = 2(1+ν)G、G は等価線形の収束剛性(ν = 0.45) | 17.9〜48.0 | 14.3 | 19.8 |
| B | ED = 2(1+ν)G0、G0 = ρVs²(微小ひずみ時の剛性) | 68.7〜72.8 | 42.6 | 40.2 |
| C | E = α·E0、E0 = 2,800N(kN/m²)、地震時 α = 2 | 12.0〜24.1 | 14.1 | 7.0 |
ばね値の単位は MN/m³。検算(方法B、As1 層):G0 = 1.8 × 180² = 58,320 kN/m²、ED = 2 × 1.45 × 58,320 = 169,128 kN/m²、kH = 169,128/0.3 × (4.6/0.3)^(−0.75) = 563,760 × 0.1290 = 72.7 MN/m³(表の最大値と一致)。方法C、Ac 層(N = 5):E = 2 × 2,800 × 5 = 28,000 kN/m²、kH = 12.0 MN/m³(同)。
同じ地盤でも、変形係数の取り方だけで側壁ばねは 12〜73 MN/m³ と約6倍の幅を持ちます。方法A は地震時のひずみレベルに応じた剛性で、ひずみの大きい深さほど小さくなり、波ごとに値が変わります。方法B は剛性低下を見込まないため最も硬く、方法C は N 値が小さい粘性土で最も軟らかくなりました。
設定方法による違い
3通りのばねで、タイプⅡ 3波の地震時増分の断面力と層間変位を比較しました(図-2)。荷重の与え方は「側壁のばねにのみ地盤変位を作用させる」場合と、「頂版のせん断ばねにも頂版位置の地盤変位を作用させる」場合の2通りです(周面せん断力・慣性力はどちらも作用)。

| 方法 | 地盤変位の作用 | 層間変位 (mm) | 側壁 |M| | 頂版 |M| | 中壁 |M| | 底版 |M| |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 側壁のみ | 8.8 | 423 | 255 | 370 | 482 |
| A | 頂版にも作用 | 12.1 | 487 | 392 | 474 | 535 |
| B | 側壁のみ | 7.1 | 398 | 141 | 298 | 471 |
| B | 頂版にも作用 | 12.3 | 493 | 400 | 472 | 547 |
| C | 側壁のみ | 9.3 | 429 | 307 | 404 | 479 |
| C | 頂版にも作用 | 12.9 | 494 | 412 | 495 | 536 |
|M| は剛域を除いた照査位置の最大値(kN·m/m)、タイプⅡ 3波平均。地盤の相対変位(頂版−底版位置)はタイプⅡ平均 13.8 mm。
側壁のみに地盤変位を作用させた場合、層間変位は方法B(硬いばね)で 7.1 mm、方法C(軟らかいばね)で 9.3 mm と、硬いばねほど小さくなりました。頂版の曲げモーメントは 141〜307 kN·m/m と 2 倍以上の差です。これは頂版・底版の水平(せん断)ばねが函体を「不動点」につなぎ止め、層間変形を拘束する方向に働くためです。一方、頂版のせん断ばねにも地盤変位を作用させると、層間変位は 12.1〜12.9 mm、頂版の曲げモーメントは 392〜412 kN·m/m に収まり、ばねの設定方法による差は小さくなりました。
ばね値の感度
方法A のばねを一律に 0.25〜16 倍して、T2-2 に対する層間変位と曲げモーメントの変化を追いました(図-3)。

| 倍率 | 層間変位 側壁のみ | 層間変位 頂版にも | 側壁 |M| 側壁のみ | 側壁 |M| 頂版にも | 頂版 |M| 側壁のみ | 頂版 |M| 頂版にも |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ×0.25 | 11.0 | 13.0 | 485 | 513 | 371 | 416 |
| ×0.5 | 10.3 | 13.0 | 468 | 514 | 333 | 416 |
| ×1 | 9.4 | 12.9 | 450 | 517 | 273 | 416 |
| ×2 | 8.3 | 12.9 | 445 | 524 | 183 | 418 |
| ×4 | 7.3 | 12.9 | 475 | 540 | 127 | 424 |
| ×8 | 6.4 | 12.9 | 553 | 569 | 132 | 441 |
| ×16 | 5.6 | 13.0 | 781 | 613 | 385 | 475 |

側壁のみに地盤変位を作用させる場合、ばねを硬くするほど層間変位は単調に減少し(×0.25 で 11.0 mm → ×16 で 5.6 mm)、側壁の曲げモーメントは ×2 付近を境に増加に転じ、×8 以上で大きく増えました(×16 で 781 kN·m/m)。層間変位が小さいことが断面力が小さいことを意味しない点に注意が必要です。頂版のせん断ばねにも作用させる場合は、層間変位が 12.9〜13.0 mm とほぼ一定で、地盤の相対変位(15.0 mm)に近い値になりました。
まとめ
変形係数の取り方(収束剛性・初期剛性・N値)だけで、側壁ばねは 12〜73 MN/m³ と約6倍の幅を持った。
側壁のみに地盤変位を作用させる場合、ばねが硬いほど層間変位は小さくなり、頂版の曲げモーメントは方法により 2 倍以上(141〜307 kN·m/m)異なった。
頂版のせん断ばねにも地盤変位を作用させると、ばねの設定方法・倍率による差は小さくなり、層間変位は地盤の相対変位に近づいた。
ばねを硬くすると層間変位は減るが壁の曲げは増える場合があり、層間変位だけで安全側・危険側を判断できない。
本試算の適用範囲と限界
- 2次元骨組+地盤ばねによる応答変位法の比較で、地盤と構造物の動的相互作用(FEM 連成解析)による検証は行っていません。
- 地盤反力係数の推定式・換算載荷幅・せん断ばね比(1/3)・荷重の与え方は本試算での仮定です。適用基準(下水道施設・水道施設・道路土工の各指針等)により規定が異なるため、個別に確認が必要です【要確認】。
- 断面力は地震時増分のみで、常時荷重との組合せ・部材照査は含みません。
ご注意
- 本ページの数値は仮想事例に対する試算結果であり、他の地盤・構造物にそのまま適用することはできません。
- 解析結果は、技術者による検証と照査を経て設計に用いることを前提としています。
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